授乳中の夫婦の問題〜part2


【 家庭の中こそ男女共同参画 】

 A子さんは医療関係の仕事をしています。
 1年間の育児休業が取れず、6ヶ月目から仕事を開始しましたが、その時に夫が長崎へ転勤になりました。彼女は福岡に残り、一人で赤ちゃんを保育園に預けて仕事を続けることにしました。
 昼休みに職場で搾乳するのですが、その時間が取りにくく、度々乳房のトラブルで来院しなければなりませんでした。
 赤ちゃんの病気で休むこともありましたが、頑張っていました。
 夫は週末に帰ってくるというパターンでした。

 ある時、民法のテレビ局が共働き夫婦の生活を取材し、A子さん夫婦が登場しました。洗濯物をたたんでいるシーンの中で、夫は自分のハンカチをたたみながら「手伝うのはいいのだが、感謝の気持ちが足りない」と発言しました。
 私はびっくりしました。彼はいつも赤ちゃんを抱っこして来院していたので協力的だと思っていたのですが、いかにワンマンな夫であるかが分かったからです。
 私が30年前に子育てしていたころと何も変わっていない男性の姿にがく然としました。

 女も一生仕事を続けたいし、結婚もしたいし、子供も生みたいというのは人間として当然の要求です。以前に比べれば、子育てに関する職場環境の整備や社会制度の改革は進んでいるのですが、家庭の状況、男性の認識はあまり変わっていなかったのかと思いました。
 そこで、「家庭の中の男女共同参画はどうなっているかを話し合おう」と呼びかけたら、14組の家族が集まってくれました。名前を『ラブファミリーの会』としました。その時に集まった夫たちのほとんどがとても協力的な男性たちでしたので、とてもうれしい驚きでした。
 いろいろと資料を集めて学習会をしたり、時には子供を抜きにして皆で思いっきり飲みながら語り合ったりして楽しい交流が続いています。

 そういう中で、B子さんの夫が初めて育児休暇を取りました。
 妻が11ヶ月休んで残り1ヶ月を夫が休みました。
 B子さん夫婦は結婚する前からも、出産後も何度も夫婦で話し合って決めました。しかし、実際に育児休暇に入って二、三日目に夫は精神的に落ち込んでしまいました。
 「まず話し相手がいない。昼間子供を抱っこして男がどこに散歩に行ったら良いのか。仕事のことも心配だし……。」
 すぐにCさん夫婦を紹介しました。Cさんは「おっぱい以外のすべての育児は男でも出来るし、育児はとても楽しい」と言っている人でした。
 自分が休みの時は妻の職場に赤ちゃんを授乳に連れて行っていました。
 とても暖かい雰囲気をかもし出している方です。B子さん夫婦をすぐに夕食に招待し、男同士飲みながら話をしました。B子さんの夫は元気を取り戻し1ヶ月の育休を子供と共に楽しく過ごしました。
 しかし、産休が終わり、子供を保育園に預けてから共働き夫婦の本当の苦労が始まったのです。子供が発熱したり、病気になったりするたびに仕事を休まなくてはなりません。急に休むことは大変なことです。
 その上、おっぱいも疲労やストレスの影響が出ました。
 夫は
 @夫婦で交代で休みを取る
 Aファミリーサポートを頼む
 B実家の応援を頼む
 C友人知人の応援も頼む
  ・・・などさまざまな方法で対処しました。

 「仕事科」と「家庭科」の二教科で合格点を目指した生活姿勢に変えていくことが、男性にとっても必須です。そして、付け加えれば、それを楽しもうという姿勢になりたいものです。それがひいては過労死を予防し、少子問題を解決するヒントになるのではないでしょうか。