■ 断乳・赤ちゃんの自立の第一歩 ■

◆ どうして一人歩きするまで母乳が必要なの? ◆

 動物の子が生後間もなく歩行できるのに対して、人間の子どもは歩行までに約1年かかります。つまり、1年の早産児です。歩き出すまでは完全に母親に、すなわち母乳に依存しています。自らの力で立ち二足歩行ができるようになってはじめて母体から離れ、乳児から幼児へと成長していくのです。良質のお乳は消化吸収力を育て下半身を発達させ、足に力をつけます。伝い歩きをすることは腸の消化力の発達を助けるなど、歩行と消化力は密接につながっています。そして完全に歩けるようになったとき、はじめて自分の力で食物を摂取して消化吸収できるようになっているのです。この頃歯も大部分生えそろい、母乳以外のものでもほとんど食べられるようになっています。この時期を見定めて断乳を行うと心身共に健やかであっさりと乳離れしていきます。

 アメリカを中心に活動している国際母乳連盟は2〜3歳まで母乳を飲ませましょうと言っています。これは日本でつい半世紀前までやっていた育児法です。私はお母さんが希望されるならば、2〜3歳まで飲ませてもよいと思っています。しかし今日本の医学界での指導があまりにも早く離乳を勧めますので,お母さんたちは気があせります。私はせめて歩くようになるまでは飲ませることを指導しています。

 

◆ 歩く様になるまでしっかり飲ませてからの断乳の利点 ◆


・赤ちゃんから幼児への成長−子どもにとっての断乳の目的


@ 親離れの第一歩
A 赤ちゃんから幼児への脱皮
B けじめをつける(成長への節目)

朝な夕なに、おっぱいなくしては一刻もすごせなかったのに…
あの「へのへのもへじ」を見た瞬間、びっくりして目の色が変わり、
お乳を隠してしまい,その後、二度と飲みつかなくなった…

◆ 母親にとっての断乳の目的−子離れの第一歩 ◆


@ 乳汁分泌を停止させる
A 乳腺炎や硬結等の予防
B 子離れ(子どもからの自立)の学習
C 子どもの成長の確認

 乳汁を停止させる方法として、現在注射や薬で止めたり、また自然に放置したり、氷で冷やしたりする方法がとられていますが、これらの方法は乳腺炎になったり、しこりが残ったりします。また、流産、人工中絶、死産等を経験している場合も黄色い乳汁が溜まっていることが多く、のちに肩凝り、頭痛、腰痛、乳房痛等の更年期の不定愁訴に似た症状が現れてきます。しかし、手技でしっかりと断乳を受けておけば、これらは予防することが出来ます。また、断入して一ヶ月目の手技の時、黄色のドローっとした乳汁が排出されますが、手技を受けてない人はほとんどこの黄色の乳汁が残っていて、次の出産の時に、この古い乳汁を初乳と混同して飲ませると、児の目やに、湿疹、嘔吐、黄疸が長びいたり、お乳を嫌がって飲まなかったりします。

 また、現在子どもが成人しても子離れできない親が増えているようですが、いずれ子どもはお母さんから自立させてやらねばなりません。その時の心の準備として、節目節目で少しずつ親子の距離をおく練習をしておくことが大切だと思います。その点、この一見厳しい断乳法は、母親にとっても子離れの第一歩の試練でもあります。
 女の一生の中であの授乳している時ほど幸せな瞬間はないし、また親子関係でもこの時ほど素晴らしい時はなく、母という字は女にヽヽ(てんてん)の乳を入れて母になると言われますが、この時期が女の花盛りだと思います。断乳が近づくにつれて母親自身が実感されることですが、お乳を与えるというこの素晴らしい関係との別れのつらさは、一年数ヶ月しっかりとこの手で抱きしめてお乳を与えてきた母親にしかわかりません。ですから、断乳の日、ほとんどのお母さんが泣かれます。この涙に、一人の女が母乳を飲ませながらプロの母親に成長された感動を覚えます。

 そして、断乳の当日の夜、のたうち回って泣きながらも決しておっぱいにしがみつきに来ず、我慢している子どもの姿を見て、なぜこんな